放射線とレントゲン?
放射線に関する話題
レントゲンって何?癌になるんじゃないの?・・・不安な気持ちで検査を受けて居る人は意外に沢山いらっしゃいます。そんな不安を少しずつ解消いたしましょう。「知らない」ことによる恐怖感、未知の物に対する恐怖感。それを取り除くのは意外と簡単です。知れば良いのだから。「絶対安全」とは言いませんが、チョットした知識を持つだけで、不必要な不安感や心配をしなくて済みます。さーみんなで知識を少しだけ深めましょう!
放射線とレントゲン
放射線とは、簡単に言ってしまえば光の仲間で、電磁波や高速の粒子線の事を言います。その中に「レントゲン線」も含まれます。1885年11月8日、ドイツのビュルツブルグ大学の教授であったレントゲンは、真空管を使った実験で、偶然不思議な性質の放射線を発見しました。これをX線と名づけたのですが、発見者の功績を称え「レントゲン線」と呼ぶ事もあったため、いまでも、一般には「レントゲン検査」とか、「レントゲン写真」とよばれています。でも、あくまでも「レントゲン」とは人物の名前であって、本来は「X線検査」「Ⅹ線写真」と言います。
身近にある放射線
私たちの周りには、放射線があふれています。大地からも、宇宙からも、タバコの煙からも放射線は出ています。自分の体からだって出ているんです。病院で受けるX線検査だけが、放射線ではありません。では、いったいどれくらいの放射線を浴びているのでしょうか。場所や食生活によって大きく異なりますが、だいたい1年間で胸の写真を12枚ぐらい撮影するくらいの量です。ただし、胸の写真の場合は、胸以外には放射線を受けてないのに比べ、自然界からの放射線は全身に受けています。飛行機に乗って海外旅行に行く時などは、地上に居る時に比べ、より多くの宇宙からの放射線を受けています。放射線医学研究所の調べによると、東京ーニューヨークの往復で胸のX線検査2回分に相当します。
放射線と放射能の違い
マスコミの報道で原発の事故の時など「今回の事故で、大量の放射能が漏れた模様です…」などと良く耳にしますが、放射能ってなんなんでしょう。そもそも、(放射能)とは、放射線を出す能力の度合いを表す場合に使います。漏れたものが放射性物質であって、決して放射能ではないのです。この辺を混同するから、本来まったく違った物である(放射線)も(放射能)も、同じように感じるんですね。 懐中電灯で例えるならば、懐中電灯の明るさを表す量が(ワット=放射能)であって、懐中電灯から出ているものが(光=放射線)なのです。
放射線の種類と特徴
内容 | 質量 | 電荷 | 浸透力 | 写真作用 | 蛍光作用 | 電離作用 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
α線 | ヘリウム原子核 | 大きい | +2 | 小 | 大 | 大 | 大 |
β線 | 電子 | とても大きい | -1 | 中 | 中 | 中 | 中 |
γ(X)線 | 電磁波 | なし | なし | 大 | 小 | 小 | 小 |
中性子線 | 中性子 | 大きい | なし | 大 | 小 | 小 | 小 |
何度もX線検査受けて大丈夫?
良く聞かれるのですが、こういった漠然とした心配が実に多いんです。X線→放射線→放射能でなんとなく恐い・・・。現場の看護師さんや、お医者さんだって同じレベルの恐怖心を持ってる人は沢山居ます。こういった場合、まず、きちんと整理するところから始めます。何を心配してるのか?って事を。発ガンであったり、遺伝的影響であったり、奇形児など出産の心配とか・・・分けて説明しないと混乱します。そして、どこに、どれだけの放射線を受けたのかをはっきりさせます。 まず押さえておかなければならないのは、受けた検査で何処にどれくらい放射線を受けたかです。手とか胸とかの検査で、遺伝的影響や胎児への影響を心配する必要はありません。ガンの発生も検査を受けた部位だけで、他の所の影響を心配する必要はありません。手や足の検査で、胃ガンや肺ガンを発生させる事はありえないのです。ここを押さえるのが、漠然とした不安を解消するカギです。
●ガンの発生について
たぶん、一番心配されるのは、ガンになるんじゃないの?って事だと思います。ここで、絶対なりません・・と言い切れば良いんでしょうが、可能性から言えば決してゼロじゃないんです。ほらやっぱり恐いんだ・・・って考えないで下さいね。詳しく説明しますから最後まで読んで下さいね。
私たちの生活環境には、発ガン物質と呼ばれてるものが溢れています。タバコ、紫外線、水道水、車の排気ガス・・・上げてるときりがありません。その中に、放射線も含まれます。自然界からも放射線を受けてますから。ここで問題となる、検査の時の放射線ですが、その量は検査によって大きく異なります。胸のX線検査だと、アメリカ旅行で受ける量の半分程度です。胸のX線検査は怖がるのに、飛行機には平気で乗る・・・この辺で、どれくらい知ってるかによって不安の度合いは違って来ますね。
放射線が体内を通り抜ける時、たまたまDNAにヒットすると(50m先から投げた豆が鼻の穴に入る・・・感じかな)、遺伝子に傷をあたえます。細胞は、この傷を修復するかも知れないし、死ぬかもしれないし、傷を持ち続けるかもしれません。傷を持ち続ける場合、傷を受けた遺伝子によっては、その細胞が新しい特徴を帯び、周囲の細胞より生存上有利になる事もあります。この段階で、その細胞はガンになる過程に一歩近づいたと考える事が出来ます。近づいた・・ですよ。
時間の経過と共に、他の変化が発生し、蓄積されます。そのような出来事が積み重なってガンが発生します。ただひとつの出来事で、正常細胞をガン細胞に突然変える事はありません。生命の営みの過程自体(酸素の消費、紫外線にあたる、食事をする・・)細胞にダメージを与え続けます。生きてる間、ずっと蓄積されます。このような理由で、ほとんどのガンが人生の後半に発生しています。これらの特徴は、十分解明されていませんが、そう考えられています。
X線の検査を受けたからと言って、その時、あるいは数ヶ月後にそれだけの理由でガンになる事はありません。タバコの喫煙に似てますね。タバコを吸ったからといって、それだけで必ず肺ガンになるとは限りません。でも、グループで見ると、吸わないグループと比べると発生率は高くなる。なんて言いながら、1日2箱吸っている俺って・・・・(^_^;)。タバコと違ってX線検査は、計り知れないメリットをもたらしてくれます。必要と思われる検査は安心して受けて下さい。
友達や家族が、週末ドライブに出かける。その時あなたは「年間1万人も交通事故で亡くなっているのだから、出かけるのは止しなさい」って忠告しますか?私なら「気をつけてね~」か「俺も連れて行けよな~」でしょう。年間1万人ってものすごい数字でも、個人レベルでは、気軽にドライブに行ったり、平気で自転車に乗ります。かたや、X線検査では、遥かにずっとずっと、ず~~~~と小さな可能性でも、不安になる。これは、正確な情報が正確に伝わっていない、そこが問題ですね。マスコミの不安を煽るような報道の仕方にも問題があるでしょうが・・・。我々、放射線技師も正確な情報を伝えていく努力をしなければ。
「医療放射線の影響」シンポジウムに参加して
医療における低線量放射線の影響について、それぞれの立場から、発表がなされました。興味深かったのは、東京医科歯科大学教授 佐々木先生の話であった。「X線検査での影響は蓄積されますか?」の質問に対して「低線量でも確かに、DNAにキズを作ります。しかし、またたくまにキズは修復される。ざるで水道の水を溜めようとしているようなものです。」放射線を水にたとえ、放射線による影響を、ざるに溜まった水とする例えでした。少量の水ではざるに水を溜める事は出来ない・・次々ざるの目から滴るから。なるほど。少量の放射線では、次々DNAが修復され、目だった影響は起こらない。原子爆弾ほどの強い放射線なら、人は生きていけません。同じように、滝の下でざるを持てば、水を溜めるどころか、ざるごと飛ばされてしまうでしょう。放射線の量や強さがポイントなんですね。ガンや遺伝的影響は、確率的影響で低い線量でも影響が有るって言われてました(管理するための法律を作る時などの為に)。しかし、自然放射線の量が2倍の地域と、普通の地域でがんの発生率に有意差はありません。
NHKのアナウンサーは、マスコミの立場として話された。マスコミとしては、マイナス面を伝える義務がある。確かに、プラス面の報道はなく、誤解を招くかもしれないが、安全なら安全ともっとあなた方もPRするべきだ・・・・。レントゲン検査=放射線=放射能と誤解を与えてしまう恐れはありますが、報道では時間的な制約がり、解説的な事を付け加えられないのが実情です。
看護師の立場から、日赤の岡田さんが「私たちは、看護教育の中で放射線に付いてほとんど教育を受けてない。しかし、患者さまはX線検査の影響の心配を、先生でも技師でもなく、私たちに聞いてくる。個人的に勉強しておかないと対応できない。看護教育カリキュラムの見直しをお願いしたい・・・・」看護師教育で不足してる知識を、個人の努力で補われてるんですね。